「あ、ううん。悩みっていうか……。
なんかね……」


あたしは小さく言って、俯く。


「自分が嫌になって……」


ウチの高校の吹部を、成績の残せない部活だと思って低評価していた自分が、すごく嫌になった。


「みんな仲良くて、優しくて……。
すごくいい部活なのに、あたし、1年も何してたんだろうって」


「………」


「勝手に評価して、勝手に自分から音楽を遠ざけてた……」


あたしの小さい声が、隣の音楽室から流れてくるクラリネットの音に消されそうになる。


確かに、今年はコンクールに出ないみたいだし、本来あたしがしたかった部活じゃない。


あたしは、誰かと競争するような強い刺激が欲しかった。


だけど、一度音楽が自分から遠ざかって行った悲しみを経験した今、こうやって楽器を手にして音を出せてることがすごく幸せなの。


「あたしもだよ?」


「え?」


長谷川さんの苦笑いにあたしは首を傾げる。