久しぶりに戻った東京は、


人が多すぎて酸素が薄い気がした。


緊張感からくるのか、


特急電車のトイレで何度も吐いた。




 宗太が、自殺を図った直接の原因を僕は大まかにしか知らない。


いや、知ろうとしなかった。



 宗太とは幼なじみで、小さな頃から友達というより、


兄弟のように育ってきた。


親同士も仲が良かったから、


小学校の頃は学校から帰るとどちらかの家で遊ぶことが多かった。



 中学二年になった頃、


宗太がクラス内でいじめられているという噂を聞いた。


僕らは、クラスこそ違うものの、仲はよかった。




宗太は、僕に悩みを打ち明けようとはしなかった。


だから、僕も今まで通り付き合ってやればいいんだと勝手に解釈していた。


宗太は明るい奴だったから、事態はそんなに深刻じゃないのかもしれない。


そんな風に思っていた。



 
 だけど、僕が思っていたより世界は残酷だった。


宗太は自殺を図る前の日に、


教室で殴られ、


けなされ、


最後はクラスのみんなが見守る中、


自慰行為をさせられたと聞いた。




 中学生にとって、いじめられることは


自分の全てを否定されているようなものだ。



学校に居場所が無い。



それがどれだけ辛いことなのか、僕は知っている。


宗太が、学校にいなくなってからの、


僕がそうだったからだ。



ただ、僕は自分から周りの人達を拒絶していたのだけれど。