今日は、雫が灯台公園に行きたいと言うから


二人でやって来た。


灯台公園というのは、僕の家の近所にある、


名前の通り灯台を丘の上に臨む海浜公園だ。


昼の間、灯台は一般開放されていて、


夏の間は観光客も多く訪れる。


しばらく、海岸から灯台の方を見ているとふいに雫が呟く。


「あたし、ここが世界で一番好きな場所かも。


ちっちゃい頃ね、一度だけ家族で来たことがあるんだぁ。」


僕は、ただその言葉に相槌を打つ。


「だんだん、秋の色になってきたね。」


雫が、空を仰ぎながら言う。


「あたしは、夏の空の方が好き。」


なんで?と訪ねると、


「だって、海と空の境界線が無いように見えない?」


と上を向いたまま答える。


「全然色が違うよ。」と反論すると


「それは、日本の海だからよ。


きっと外国のきれいな海は、同じ色に見えると思う。」


と雫が呟いた。


そんなこと、考えたことが無かった。


そういえば、僕は外国の海も空も、


どんな色なのか、どんな風に見えるのかなんて知らない。



 突然、雫が「あっ」と小さく呟いて、空を指差した。


その先には、四分の一が掛けた月が、白く浮かび上がっていた。