会計と薬の処方を終えて廊下に出ると、


雫がさっきの看護師に何かを訴えている声が聞こえた。


「いい、ひとりで帰れるから大丈夫。」


「でも、帰り道でまた倒れたら大変よ。

ね、お家の人に迎えに来てもらおうね。」


「だめ!家には連絡しないで。


あたしひとりで帰れるから。」


諭す看護師の声も雫には届かず、


彼女は「いやいや」とかぶりを振った。


「あたし、大丈夫だから。」


雫は、そう言うと立ち上がって歩き出してしまった。


看護師が慌てて後を追うが、お構い無しで歩いて行ってしまう。


日のあたる廊下に伸びる小さな影。


その肩が、小さくて、彼女が何だか消えてしまいそうに見えた。


僕は、看護師に「送って行きます。」と告げると、


何かにはじかれた様にその後を追いかけた。