ツンツンと、後ろからペンで背中をつつかれる。 それに気づいて顔をあげると、先生とバッチリ目があった。 「オレの授業で寝るなんて、お前、度胸あるじゃねぇか。」 先生のニヤニヤしている顔が怖い。 これは、高校2年生の夏休み前の話。 ふっと後ろに視線を向けると、さっきペンであたしをつついた張本人と目があう。 はにかんだような表情をしている。 名前は吉田 拓(たく)。 あたし、香月奈々(なな)の隣の席の住人。 第一印象は、はにかんだ表情が、ただ、ただかわいいと思ったんだ。