陽葵は制服のポケットから一つ鍵を出した。
薄くなりかけて『男子バスケ部』の文字が書かれてる。
「この鍵も最後なんだね……」
「ん…もう使うことないな」
「あたし…新しいマネージャーの子に預けて来るねっ」
「あぁ。玄関で待ってるな」
「うん!」
鍵を握りしめて走ってく陽葵。
この蒸し暑い体育館が懐かしくなるなんてな…。
誰もいない体育館でしみじみ思う。
「ったくおい!蓮斗!」
「律唏!?お前いたの?」
「いたのじゃねーよ!タオル忘れたのに、陽葵ちゃんとイチャイチャしてっから入れないし!」
「イチャイチャなんてしてないけど……梨結ちゃんは?」
「玄関で待ってる。…じゃっ!また学校でっ」
タオルを片手に去ってく律唏。
もう一緒にバスケすることないんだよな。
その律唏の背中に「ありがとう」って言った。

