鬱になれる短編集

親友は少女を一瞥すると食料を手に廃墟の方向へ戻っていった。
少女に背中を向けて。泥で靴を汚しながら。

「ま、待ってよ」

後ろから少女の声。怯えたような声だった。
銃口を向けているのは少女の方だがすでに主導権はこちらが握っているらしい。

親友は立ち止まり振り向く。その顔は感情を持たない彫像だった。