「可哀想な……か。この世の全てがあいつの意思ではないのだと思うと、いたたまれない気はするんだがな」


神威の表情が曇る。

現世とこの安良波村の狭間に産まれ落ちたのも、こうして番人として生きるのもーー……どちらも、シンの意思などではないのだから。

そして、自分がなすべき事だけを考えて生きる。


全うすれば、自分の存在が消えてしまうのだとわかっていて、だ。


そう。

シンの役割とは。

安良波村付近へと迷い込んできた魂を誘導し、安良波村へと案内することから始まる。


そうして、後にその魂を守る役割を受ける。

だからこそ、凛はこの世界に迷い込んだ時初めに会った人物はシンであった。後、警護の役割につくのはシンである。それも、スムーズな流れでだ。

これは、ずっとずっと昔から決まってずっと繰り返されてきた流れなのである。


村人は皆、このシンの役割を「番人」と呼ぶ。




……「生贄の番人」と。