時は少しばかり遡り。

村人とシン、白夜、千夜が話し合っていた頃。


「おかしな話だ。なぁ?神威」


「あぁ。あまり頭のいい選択であるとは言えないな。しかし五木、問題はお前だろう。このまま凛が幽閉されるのだとしたらこちら側に連れてくるのはまた至難の業になってしまうだろう?」


暗闇の中。

それは、会議の行われる部屋の外ーー……近く、林の中での会話だった。

聞き耳を立て壁に付けていた耳を離し、小さな声でのやりとり。

五木と神威の表情は、深刻な事態に陥って焦るというよりかは村人達のしている会議の内容、ひいてはその結論に対してとてつもない冷めた感情を表し、それを抑えきれていない。


特に五木のまとう空気はとてつもなく、冷たいものだった。


「守るために幽閉ねぇ……。何から守るって、それぁ俺だって、同じことだろ?」


「そういうことになるのだろうな。……まったく、シンにも早く気付いて貰わねばならないというのに」


「しかたあるまいよ。あいつは現世を知らない。空間の狭間で生まれてしまった、可哀想な子だ。」