鈴音~生け贄の巫女~



もっともな話である。言い返せない。


「っつーかさあ、お前が興味を示すのってそこな訳?拐われた今の自分の状況よりも、拐った俺に興味があるの?」


「そういう訳じゃ、ないんですけど……!あの、でも、………なんて、……」


「え、何?聞こえないって」


「………なんて、お呼びすればいいかなって!!」


時間がたつにつれてこの雰囲気に慣れる、そしてやけっぱちになってくると言ってしまっても良かろう。


どこのだれが誘拐された先で自分を拐った本人の名を聞き、しかも怒鳴り返すというのだ。

もしいたとしても、命知らずか余程の―――……。


「馬鹿」


「な!?」


そう、馬鹿しかあるまいて。

嗚呼、可笑しや可笑し。


クツクツと腹を抱えて笑える男の姿が凛には見えておらず、突如聞こえてきた笑い声に凛は戸惑った。