「は、………――、」


「あー、声は出しちゃダメだぜ?」


ヅ、となぞっていた指に力が入った。

小さな痛みに尚更恐怖を覚え、なにがなんだかわからぬ混乱したままの頭でこくこくと数回頷く。


「ふーん。じゃあ、甘いものが好きなわけ?」


凛は、この質問に答えるべきなのか迷った。


甘いものが好きか嫌いかで聞かれれば、それは好きであることに違いない。

が、問題は今の男の言葉は自分が答えることを前提に言った言葉ではないということだ。

今の言葉は、凛が「好きだ」ということを前提に言っているのだから。

なにより、一回目の質問のときのように返事を促されてはいない。



間違ってはいけない。

返答を間違えると、簡単に殺される。

自負を拘束する男は、それだけの冷徹さを持ち合わせている。


そして、その迷っている間に刺激臭が鼻をつき息を止める――……否、その香りは甘かった。

「ぴったり。ほら、これ、甘いだろ?」


嘲りにも似たような声色が、霞む意識の中で聞こえる。

そうしてから、今度は意識を暗転させた。