「お前一度にいくつ質問する気だ。せめて一つずつにしろ馬鹿野郎、答えられるもんも答えられねぇだろう、なぁ?」


面倒臭そうに、ゆっくりと息を吐き瞬きをして、顔を凛に寄せた五木の脳内では、どこまで教えていいものかと考える。

話を全て掘り返し教えるとなると、長い。

とはいえ、それこそが凛の知りたいことであると分かっていて、—————今はどうにもそんな時間がないのだ。簡潔に今話してしまうべきだろうか。

否。


「これから連れて行くところに真相がある。それまで我慢しろよ……」


近く、まっすぐに自分を見上げてくる凛の頭をポンと撫で、顔を空へと向けた。

夕焼け色に染まりつつあるそれはあと数分もすればすぐに暗くなろうて、そうなってしまっては村人達も迂闊に外へ出て牢屋から抜け出したか弱き乙女を無理に探そうともしないかと思う。

時間制限は明日の朝、明るくなる頃まで。

それまでに件の場所へ移動し凛に真相を知らせ、シンと合流せねばならない。

ぐりぐり、ぐりぐりと凛の頭をなでくりまわしながら、ふと頭の隅で思う。

何故自分はこんなにもこやつめの面倒なぞ見ているのやら。

最初はシンへ知らしめてやろうと、次は失敗するなと警告をするとともに復讐じみたことをしようとしていたのは認めよう。なのにシンが見るに絶えず「前」と同じ道を辿ろうとしているから協力しようと思った—————……とは、言い訳が。

この娘のどこに惹かれて、ここまで手を貸してやっているのかとんと検討もつかねば、それ以上は考えていても無駄だと思考を止めた。


「わけわかんねぇよ、なぁ……」


「……?はい……」