ここから、どれだけ大きな声を出せば外に聞こえるのだろう。

ここから、どれだけ目が良ければ外の光が見えるのだろう。


そうして思い出すのは、凛がここに来る時に通ってきた洞窟のような道——……暗くはてしない、足元に霧がかかったかのようなあの道だ。


混乱し、取り乱そうとする身体の筋肉をどうにか押さえつけて、凛は一先ず深呼吸をした。

そうして、ガタガタと震える脚を無理に踏ん張ろうとせずにストンと座り込む。


「シンさん。——……」


ゆっくりと、静かに、何かの本能に従って、そう呟いた。


それは助けを求めるものであり、縋るように切羽詰まったものではない。



———…………もっと、もっと、呼べ。


「シンさん……?」


—————…………そうだ。もっと。


「シンさん……!!」


ゆっくりと、瞳を閉じる。


息を吸って、吐いて、……もう一度、開ける。


ぐるりとあたりを見回せば、暗闇に慣れてきたせいか先程よりもかなり物を見分けることができた。

ジャラリとなる鎖は、確かに鉄製で頑丈そうではあるが古いものであるということはわかる。

ツンと香るサビた匂いが何よりもそれを示してくれた。