籠の中の蝶は道化師か




「君はだれ?」


再度問うて来た男に俺は言った


「……俺は木野颯太……木野早苗の息子だよ」


釈然としないが一応言った
男はにこりと笑って首をかしげる


「颯太……早苗さんの息子は今日のこの時間は病室には来ないはずだけど?」


毎朝、母の病室に顔を出す
けれど、今日は少し違った


「今日は授業が休講だから……昼頃まで空いてるんだ」


大学の授業に間に合うように、いつも定時に病棟をあとにしていた


「大学?もしかして美大生?」


イスに置いたバックに入れたスケッチブックに視線を向けた


「あぁ……って!そんな事より、あんたは誰だよ!」


睨み付けたが、気にした様子もなく男は目を細めた


「ボクは初春、早苗さんの友人だよ」