「うわ琴里、それずっと持ってたの? 重かっただろ」

「な、んか、緊張して、よくわかんなかった……」



言いながら、その場に思わずへたりこんだ。

きつくジャグを握りしめていた手が、しびれて、震える。



「あはは、なんか、震えちゃってるや……」

「………」



安心して、笑いたいのに、うまく笑えない。

きっと泣き笑いのような変な表情になってしまっているあたしの目の前へ、無言で悠介も同じようにしゃがみこんだ。

そしてそのまま彼の手で、ふわりと自分の両手を包み込まれる。



「ッ!?」

「ほんとだ、震えてる」



そう言って悠介は、すっぽりおさまってしまっているあたしの手をこしこしとやさしくさすった。

あたしは身動きがとれなくて、だけど心臓だけは、バクバクと音が聞こえそうなほど働いていて。

彼はそんなあたしの様子も気づかずに、まるで子供みたいに笑う。



「ふは、琴里の手、ちっさ! “女の子”~って感じ」

「──ッ、」



あたしの頼りない両手に触れるのは、野球の練習でできたマメが、固くなった手のひら。

自分のものとは全然違う、“男の子”の、手。