私は今、病院から近いアパートで一人暮らし中。

そして自転車で通っている。


自転車を裏門まで押して歩いていると人影がいた。


「コウ…？」


そこには車を路肩に止めて門に寄りかかるコウの姿があった。


「何で嘘ついたの？
夜勤なんてなかったんでしょ？」


コウが私を見て言った。


「話したくなかったの。
もう終わったことでしょ？」


冷たく言い放って私は進もうとした。

しかし自転車のハンドルはコウの大きな手によって抑えられていた。


「じゃあオレの話、５分でいいから聞いてくれよ…」


コウは傷ついたように顔を歪ませた。
お願いだからそんな顔しないで…


「オレ、沙菜がまだ好きだ…

オレはまだ付き合ってるって思ってる。

忘れるなんて無理だった。

沙菜はあの時、オレの事嫌いになったの？

頼むから終わった事なんて言わないでくれよ…」


私の肩を掴んで真剣な瞳で見てくるコウに戸惑う。