純白の闇

何の変哲も無い指定の内履きを
手に取り床に落とす。


特に気に入ったわけでもないスニーカーから内履きに履き替えようとしたとき、


「暁!おはよーさん!」


朝からよくそんな元気で居られるなと
思うような声が響く。


声の主はクラスの人気者、
橘 光太郎[タチバナ コウタロウ]。

こんな平凡な学校には似合わない
爽やかな正統派イケメンでありながら
とてもフレンドリーな性格で
彼の周りには人だかりが絶えない。


こんな奴が、さっき言ったような
自分らしく居ても、人に嫌われない人。


「おはよ、橘!」


心の中で考えているようなことは
顔に出さずに挨拶を返す。


「お前、こないだの模試、どうだった?
…て、聞くまでも無いよな。
毎回、学年1位だし。」


すげぇよなぁ、と話す橘。

…親がうるさいから勉強してるだけ。


勉強なんかばっかりしてるから
こんな時、何て返すのが正解なのか分からない。


現代文の主人公は上手く答えるのに。
数学なら答えは1つしかないのに。
英語ならば返事をしても
橘に伝わらずに済むのに。


「橘だって今は部活で忙しいだけで
やればできるタイプじゃんか。」

僕は知ってるんだからな!と
にこやかに返しておく。


無意味な、ひたすら面倒なだけの褒め合い。


僕の苦手な物の1つ。



2人で教室へと向かう。