あと3cmぐらいになった。
でもどんどん顔を近づけてくる。
「あの、やめてって言って……っ」
全く聞く耳を持たない。
もう……無理かも……。
私はグッと目を閉じた。
………あれ?
唇になんの感触もない。
「ふ、面白いヤツ」
そんな声が聞こえて目を開くと、余裕そうに私を見て笑う翔希って人がいた。
「か、からかわないで下さいっ!!!」
また違う恥ずかしさで顔が更に赤くなる。
もう……恥ずかしいっ。
「つーか、敬語使わなくていい。あと、名前も呼び捨てでいいから」
嫌だよこんな人を呼び捨てなんて……!
「俺は由愛、って呼ぶから」
翔希君……でいいかな。
キーンコーン―――
予鈴のチャイムが学校中に鳴り響く。
「じゃ、私帰るから」
私は翔希君の返事も聞かずに屋上から教室へ帰った。
―――私は、最悪な出会いをしてしまったようです。