「だって友達が言ってました! 2年生でかわいい顔の高原せんぱいは、絶対ツンデレだって!」

「……は? え?」

「あの、あたしツンデレの人って初めてなので、記念に握手してください!」



一方的にそう言って、俺の左手をとりそれをぶんぶんと上下に振る正体不明女。

未だについ先ほど放たれた言葉を頭の中で処理できないでいる俺は、その手にされるがまま。


……え? 今なんて言ったコイツ? つんでれ?



「──ぶっ!! わははははは!!」

「おっおまっ高原!! 何見ず知らずの女の子にツンデレ呼ばわりされてんだよ~!!」



近くでずっと会話を聞いていたらしい横山や他の奴らの吹き出した音と爆笑にハッとして、トリップしていた思考が一瞬にして戻ってきた。

そしてそれとほぼ同時に届く、耳をつんざくような悲鳴に近い声。



「ぎゃー馬鹿真白───!! あんた何言っちゃってんの───!!」

「すみませんすみませんこのコちょっとというかもうかなり変なんですごめんなさい~!」

「わわ~~高原せんぱいさよなら~~」



どうやら向こうも最初からそばに友達がいたらしい。『マシロ』と呼ばれたその女は、友達らしき女子たちに両脇から抱え込まれどこかへ連行されていった。

一部始終を見ていた通りすがりの生徒からは好奇の視線。未だ笑いころげる友人たち。

ポカンと立ちつくしたまま、たった今去っていった女たちの後ろ姿を見つめていた俺の口から、思わずこぼれる言葉。



「……何今の、タチの悪い白昼夢?」

「現実を受け入れろ高原、正真正銘100%三次元での出来事だ」



ポンと俺の右肩に手を置く横山が神妙な顔をしながらも、その肩が笑いをこらえるように震えていることに気づいたので。とりあえず俺は、その背中を足蹴しておいた。


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