「井上さん、立てるっ?」


「……うんっ…うんっ…。」


そう言って井上さんは僕の手を

ぎゅっと握って立ち上がった。


立ち上がった井上さんの浴衣の袖口から

真っ赤な血が流れているのが見えた。


「誰がこんなことを……」


僕は思わず井上さんの浴衣の袖を捲って

腕をじっと見つめた。


刃物で切ったような…そんな傷。


「雄星くん…誤解だわっ…。私が少し転んだだけよ…。」


井上さんは僕に背を向けて必死に腕を隠した。


彼女の足元をよく見ると何も履いていない。

ガラスの破片が刺さって血が溢れ出ていた。