忘れるわけがない。
あたしがアイツを忘れるわけがない。
アイツが亡くなった日を忘れるわけがない。
忘れたくても、脳に、この身体に染み付いている。
着替えを終えたニナがあたしに駆け寄って来た。
「美和・・・」
ニナは悲しそうな表情を浮かべあたしの手をとった。
本当はニナにこんな顔をさせたいわけじゃない。
「ヤダな〜。どうしたニナが泣きそうなの?もう終わったことだよ?」
あたしはニナをあまり見ないようにして前を向いた。
「じゃあ、どうしてたまに辛そうで悲しそうな表情を見せるの?私、無理して明るく振る舞う美和を見るのが辛くてしょうがないの!」
「・・・でも、そうしなきゃみんなあたしに同情するから。それがヤなの。」
みんなに人が亡くなった話をしてどうすんの?
みんな同情するだけじゃない。
「・・・美和、来週元くんの四十九日。」
ニナはそれだけ言うと、走って行った。
それからも午後の授業があり、カラオケに行く空気でなくそのままあたしは一人で帰った。

