「うう、寒い……」
思いっきり外に飛び出してみたものの、いくあてなんてなかった。
でも、確実にあたしの足はあの場所へと向かっていて。
なんでだろ、無意識かな……
複雑な気持ちのまま辿り着いた場所は確かにあの場所で……
「……久しぶりだ」
辿り着いた場所は『海の夕日』
あの日からここには来ないようにしていた。
いや、来れなかった。
また、思い出してしまいそうで…怖かった。
でも、ここでは泣かないって決めたから……
風に誘われるように柵の前まで歩いた。
ふわーっと舞った風は冷たく、でもどこかこの感覚は懐かしさを与えた。
「……やっぱり、好き。」
柵に腕をおいて夜空に包まれる海を眺めていると……後ろからガサガサと音が聞こえた。
パッと振り返るとそこには、起き上がる体制の伊月がいた。
「……え?何してんの?」

