「あ、あたし。お茶入れるね!」
ソファーから立ち上がったあたしは
キッチンに向かおうとしたけど
床の雑誌で足を滑らせてスローモーションに伊月に向かって倒れてしまった。
「痛たたたー。あれ、痛くない?」
倒れたはずなのにどこからも痛みは感じなかった。
「お前……!」
すると、下から潰れたような声がして。
なんとなくわかっていたけど、伊月があたしの下敷きになっていた。
「キャ、ご、ごめんってば!」
「早くどけ。重い……」
「お、重いだって!?重いって思ってても口に出すな!」
「素直に言うのが当たり前だろ!」
「あんたね……」
不意に、重なった視線。
やっぱり、冷血じゃない伊月の方がいい。
キラキラしている伊月の方がいい。
確かに、そう思った。
「いつまで見つめてんだよ。」
「なっ!見つめてなんか!!」
さっさと降りてやろうとしたとき、リビングのドアが開いた。

