その音に驚いたあたしは咄嗟に目を開いた。

履いていたミュールが一足海に落ちたのだった。


その途端、安堵なのかよくわからないけど何だかホッとして涙を流している自分がいた。


「死ぬ勇気のないヤツが、自殺なんか図ろうとすんな。」


冷血王子がボソっとそう、言った。


「大切な人をなくして悩んでいるヤツなんてこの世界にはいっぱいいるんだよ。悩んで苦しんで……人間みんなそうなんだよ。」


冷血王子はあたしの目を見つめる。


「お前みたいに人前では強がってるけど本当はそうじゃないってやつも。この世にはたくさんいるんだよっ!」


ボロボロとまた涙が溢れ出る。


「一人じゃねーんだよ。みんな、悩みを抱えながらも笑って生きてんだよ。
それだけは、忘れんな。」



「うっ、うっ。死ぬなんて、言って…ごめんなさい。みんなの顔が浮かんで…。」


ニナがあたしに駆け寄って来た。