「淳ちゃん、相変わらず無茶するんだから」
軽い調子でそう言うと、
「無茶するに決まってんだろ」
珍しく、淳ちゃんは笑み一つ浮かべずあたしを見た。
その真剣な瞳に押しつぶされそうになる。
視線が反らせなくなる。
そして、再び淳ちゃんはゆっくり口を開いた。
「美優、大丈夫か?
何もされなかったか?」
「……え?」
「あいつ……かみ……いや、橘に」
淳ちゃんは敢えて橘と言った。
それが妙にひっかかる。
「なんで?
隼斗、すごく優しいよ」
何も知らないフリをして、努めて明るく聞く。
我ながら素晴らしい演技だ。
淳ちゃんはあたしを見て、はぁっとため息をついた。
そしてそのオレンジの髪をくしゃっとする。
昔から、淳ちゃんが困った時にする癖だ。



