「俺はもう行かなきゃ」 そう言って隼人は手を伸ばす。 つられてあたしも手を差し出すが、あたしの手は隼人の手を通過して宙を掻いた。 「え……」 得体の知れない恐怖があたしを襲う。 「やだ……」 顔を歪めるあたしに、 「ありがとう」 隼人は幸せそうな笑みをくれる。 そんな笑顔、いらない。