「それより……」
あたしは、ふと疑問に思ったことを口に出す。
それは、
「隼人……神木って、そんなに強いんですか?」
ということだ。
あたしの前の隼人は平和主義で。
淳ちゃんにどつかれても嫌そうに顔を歪めるだけで、滅多に反撃なんてしない。
それに、隼人は淳ちゃんと互角だったなんて言っていたし。
「え!?知らねぇの?」
斉藤先輩は気まずそうに頭を掻く。
「俺らの街で、不敗伝説を貫いていたのは奴一人だ。
俺らが束になってかかっても、あいつ一人には敵わない」
不敗伝説……。
そんなにすごいのかな、それって。
だけどあたしは……人を傷つけない優しい隼人が好きだ。
「あいつ、変わったよな。
誰か分からねぇくらい」
斉藤先輩が煙草の煙を消し、あたしに向き直る。
「狂気も殺気もねぇ神木は……マジでかっこいいと思った」
胸が痛い。
隼人が認められているみたいで、すごく嬉しかった。
知り合いに会うたび、辛そうな顔をする隼人。
だけど、隼人の良さに気付いてくれる人は、予想以上に多い。
いつかは、またあの街を歩けるのかな。
堂々と背を伸ばして。



