斉藤先輩はそんなあたしから目を逸らし、煙草に火をつける。
そして大きく息を吸い、その煙を嗜んだ。
気まずい空気が流れる。
必死で言葉を探すあたしの横で、
「なんてこった」
斉藤先輩が呟く。
先輩は宙を眺めたまま、ゆっくりと煙を吐き出した。
「城内、ヤクザにまで狙われてんのか」
部屋の中からは、荒々しい声と破壊音が聞こえてきて。
隼人や淳ちゃんの安否が気になるあたし。
男の叫び声が聞こえたのを合図に、思わず立ち上がってしまった。
斉藤先輩はこっちすら見ず、そんなあたしの手を引く。
「お前まで入ってくんじゃねぇ。
あいつ……神木がいるなら訳ねぇだろ」



