「罪は消せねぇけど、償うことは出来る。
……お前はすげぇよ」
それは俺の本心。
「今のお前、嫌いじゃねぇ」
「城内……」
橘は、まっすぐな瞳で俺を見る。
その視線が痛くて、俺は横を向いた。
こいつは、いつからこんな顔をするようになったのだろうか。
まるで無垢なチワワみてぇだ。
昔は、狼みたいに荒れ狂った顔しかしていなかった。
「……それに、ありがとよ、昨日」
「……?」
「俺をヤクザから助けてくれた。
腕、何ともねぇか?」
「ただのかすり傷」
奴はそう言って、相変わらずいい人顔して笑っていた。
昨夜、仕事後に偶然街で会ったヤクザに襲われた。
それを橘が助けてくれたのだが、橘がいなかったら……そう考えると寒気さえした。
やっぱり、橘が本気を出すと俺なんて足元にも及ばねぇことを見せつけられた。
能ある鷹は爪を隠す。
まさしくこいつのことだ。



