「あれ、本当に神木隼人?
随分雰囲気違うくねぇ?」
「何で城内先輩といるんだよ?」
北高の後輩らしい男がひそひそと話をするが、俺と目が合ったら慌てて逸らした。
この居酒屋には、どうやら祭り帰りの若い奴らしかいないようで。
奴らの存在を吹き飛ばすかのごとく、俺は再びビールを飲む。
「なぁ、城内……」
橘は静かに口を開き、顔を上げる。
その顔は、何だかすごく辛そうで。
「俺は一瞬だけ、美優と別れることを考えてしまった」
「……は?」
俺は橘の綺麗な顔を、穴が空くほど見つめていた。
「平穏に暮らそうと思っても、俺はトラブルから逃げられないみたいだ」
「それは、俺たちの運命だろうよ」
そう……。
散々人に迷惑をかけてきた報いだ。
いくら真面目になっても、いくら昔の仲間と縁を切っても、思わぬところでしわ寄せが来る。
「俺の罪は、簡単には許されない」
橘はそう言って、また一口ビールを口に含んだ。



