「利枝、やめたら?」
また一つ、新しい声がする。
人々はざわっとして、その声のする方を見た。
彼は広場の端に立っていた。
月の光がその金髪を眩しく照らしていた。
「達也」
利枝はその美しい顔を歪めて達也を睨んだ。
まるで、害虫を見るように。
恐ろしい。
あの綺麗な顔が、こんな般若みたいな顔に変貌するなんて。
「俺たちの世界から出ていった男にすがるなんて、みっともねぇ」
その言葉に、
「あなたには関係ないわ」
利枝はぴしゃりと言い返す。
利枝の権力がどれほどか分からない。
だが、周りの男たちは居心地が悪そうに身体を動かした。
そして、あやちゃんの鼻をすする音だけが響いていた。