隼人はどんな顔をしているのだろう。
だけど、その帽子と眼鏡が邪魔をして、全く表情が見えない。
利枝は権力を駆使してまで隼人を手に入れようとしていて。
いくら隼人の気持ちがないとしても、とても恐ろしい。
あやちゃんのためなら、隼人は利枝についていってしまうかもしれない。
昔からの、たった一人の理解者だから。
「お兄ちゃん、駄目!」
あやちゃんが叫ぶが、近くの男があやちゃんに蹴りを入れる。
あやちゃんは腹を押さえ、丸まって咳き込んでいた。
利枝は最低だ。
気持ちのない隼人と付き合って、楽しいのだろうか。
あたしは……
そんなの嫌だ。
隼人があたしから離れてしまうのも、隼人が辛い思いするのも嫌だ。
ドキドキドキドキ……
しーんとする中で、鼓動の音だけがやたら早かった。



