淳ちゃんは、いつものようにあたしの頭をぽんぽんと叩く。
そして、
「橘のことだ。
絶対負けねぇ」
なんて言う。
あたしは、そんなことを考えている訳じゃない。
あたしは、ただ孤独で寂しいだけだ。
「おい、淳!」
淳ちゃんを呼ぶ声が聞こえ、懐かしい先輩たちが現れる。
相変わらず派手な格好をしていて、悪目立ちして仕方がない。
一般の人からしたら、関わりたくない部類に間違いなく入る。
人ごみなのに、あたしたちの周りにだけ人が近付かないのは、滑稽にさえ思えた。
「こんなところで油売ってんじゃねぇよ!
屋台の片付けしねぇと!!」
夜なのにサングラスをかけた先輩が淳ちゃんを引っ張る。
「それによ、神木らしい男を見たって情報もあるし」
「神木か。
やべぇなそりゃ。
さっさと店畳んで撤収に限るな」



