「えっ……」
一瞬だった。
心の準備も何もなかった。
開け放たれた玄関にはたくさんの靴が置かれていて、来客中であることは一目瞭然だ。
「あや、おせーぞ」
中から聞こえる男の声。
それに続く楽しそうな笑い声。
そして、奥の扉が開かれて、元気な男の子たちが走ってくる。
見たところあやと同い年くらいで、学校の友達だろうか。
だが、彼らは隼人とあたしを見て、ぎょっとしたような顔をする。
「あ……あや。
その人もしかして……」
「うん、お兄ちゃんだよ?
今夜ライブ見に来てくれるんだって」
あやは嬉しそうに答えていた。
だが、他の男性陣は明らかに青ざめていて。
「あや、俺、用事があるから。
美優の準備が出来たら迎えに来る」
隼人は静かにそう言って、家を後にした。



