川崎美優。
あたしの名は、高校の中ではそれなりに知られていた。
淳ちゃんの金魚の糞だったから。
だけど、他校まで知れ渡るほど有名ではない。
あたしは不良でもなかったし、大抵大人しくしていたから。
例外として、神木のような淳ちゃんを狙う奴が知っていただけなのだ。
なのに、何でこの人が……。
彼をまじまじと見る。
ほんのり茶色い髪を、ふわっとワックスで散らしていて。
その下から覗く顔は……それはそれはもう、かっこいい。その一言に尽きた。
切れ長の瞳は柔らかい光に満ち溢れ、形のいい唇はきゅっと口角が上がっていて。
どう見ても、淳ちゃんや神木のような人種には見えない。
敢えて言うなら優等生だ。
「あたし……なにか?」
思わずそう聞くと、
「ううん、何かの間違い」
彼はそう言って笑った。
何かの間違い……
そりゃ、そうだよね。
いとも容易にそう信じてしまったあたしは、彼を見て満面の笑みを浮かべていた。



