足元が震えていた。
こいつを怒らせれば、半殺しじゃ済まないから。
あの時、俺に看板が突き刺さらなくても、俺は間違いなくICUに入っていただろう。
だが……
「……悪い。
そういう気はない」
橘はそう言って、俺から視線を反らす。
その瞬間、金縛りから開放されたかのように、身体の力が抜けるのだった。
へなへなと座ろうとする身体を必死で支え、橘を睨む。
怯えていることを悟られないよう、ありったけの敵意をこめて。
橘ほどの破壊力はないが、俺だって巷では恐れられていた男。
こんな俺に睨まれても、やっぱり橘は平常心。
その事実にイラつく俺がいた。



