手が痛い。
力一杯奴を引っ叩いたから当然だ。
肩で息をする俺。
橘は頬を押さえたまま俯いた。
ただの腑抜けだ。
かつてはあんなに恐れられた男の今の姿はこれだ。
こんな男と張り合っていた自分がみっともない。
こんな男じゃ……
「鬱陶しい。
大人しくしてやったらこれかよ。
………うぜぇ」
俺は慌てて橘を見た。
さっきまでの、平和ボケオーラが無くなったから。
代わりに、以前俺が怯えていたあの破壊的オーラが立ち込めていた。
忘れていた。
こいつは、睨むだけで人を気絶させるほどの恐ろしい男。
喧嘩には自信のある俺でも、身体に震えが走るような、邪悪で容赦ない男。
やっぱり奴の本性はこれだ。



