「美優は関係ない」
橘は相変わらず冷静を貫いている。
俺に胸ぐらを掴まれたまま、まっすぐに俺を見た。
「俺は城内の力になりたい。
何でもしたい。
だけど……美優だけは諦められない」
何だよこいつ。
「気持ち悪ィな」
俺はボヤいていた。
いつからこいつはこうも弱い男になったのか。
誰にも頼らず、自分の思うままに突き進む、豪傑な男じゃなかったのかよ。
「……どうして俺を助けた?
俺なんか死んだ方が……」
「馬鹿野郎!!」
俺は怒鳴り、橘の頬を思いっきり引っ叩いていた。
静かな校内に大きな打撃音が響き渡る。
橘の綺麗な顔が歪み、そして奴は頬を押さえて俺を見ていた。



