あーあー…。
もう行こうとしてるのに、どうしてまた、そういうこと言うのかな。
「そんなの、わかってるよ」
もっと深くキスをしたいという欲を心の中に押し込めて、ドアノブに手をかけたまま、真子に近づく。
「もっかい…ちゅーしよっか…?」
そう小声で呟いて。
ちゅっ、と真子の唇に触れるだけのキスをして、リビングに戻った。
「あ!瑠偉くん!ナイスタイミング!今出来たとこよ〜っ」
リビングに戻ると、朝から元気いっぱいのおばさんは、俺を席へと促す。
薄いピンクのチェックのエプロンがよく似合うおばさんは、眉間にシワを寄せて、
「おっそいわね、真子は」
と、フライ返し片手にぼやき始めた。


