なんでそんなこと言うの、とクリスティーヌが聞くと、テアンは頭を掻き

「なんか浮かない顔してたからさ」

 とお見通しだと言いたげに答えた。

「…そ、そうかな…」

 実はね、とこの間の無礼な態度のことを打ち明けようとしたが、どうしてもできなかった。

 言うことが恥ずかしかったというのもあるが、王子の顔を知らなかったということを打ち明けるのが嫌だったのだ。

「ふーん…まぁいいや。チョコ、おいしかったからちゃんと食べなよ?」

 それだけ言って、テアンはクリスティーヌの家の敷地を出て行った。

 クリスティーヌは作り笑いを浮かべて彼を見送った後、手の中のチョコレートを見て軽くため息をついた。