怖くなり、クリスティーヌは気が付くとテアンの去って行った方向へ歩き出していた。

 耳元で太鼓の音が聞こえる。

 誰かの手が一瞬視界にうつった。

 クリスティーヌは、人々の真ん中に立っていた。

 音が聞こえる。

 声も聞こえる。

 景色が見える。

 リンッ

 父にもらった鈴が落ちる音が聞こえた。

 拾おうとしたクリスティーヌの目に、大きな茶色い面をかぶった男が立っていた。

「…?」

 彼は誰なのだろう。

 面をかぶっているのに、踊ろうとも楽器を演奏しようともしない。

 ただ、立っているだけだ。

「…来い」

 どこからか、声が聞こえた。

「え?」