渡り廊下から、南館に戻らず、グラウンドのそばにのびる階段を、小走りで駆け下り、

ドキドキしている心臓を押さえ、一度深呼吸した明日香は、渡り廊下の下をくぐり、

正門まで歩こうとする。

真下から、渡り廊下を見たけど、少年の姿は見えなかった。

角度の問題か。

明日香は諦め、とぼとぼと歩き出す。

俯き…正門までの真っ直ぐな100メートル程の距離を歩く。
「遅い!」

遠くの方から、声がした。

顔を上げた明日香の視線の先に、正門にもたれる少女がいた。

親友の里美だった

ショートカットの髪に、男の子のように、精悍な顔立ちが、

思いっきり、明日香を睨んでいた。

「いつもより遅いぞお。ああ…親友が、男に見とれている間…健気に待つア☆タ☆シ!なんて…かわいそうなの」

大層な物言いに、明日香は呆れた。

つかつかと早足で、里美に近づき、

「あんたも、部活の帰りじゃない!」

里美は苦笑すると、明日香を見ずに、呟いた。

「高橋君…いた?」

明日香は、里美の微妙な変化に気づかない。

「いたわよ。シュート決めてた」

「ふ〜ん」

里美は、正門から離れると、歩き出した。

遠く夕陽が沈む前に、一段と輝いていた。