フラフラとカウンターまで歩いてくると、明日香は席についた。

ニヤニヤしながら、阿部が近づいてきた。

「何かあったの?明日香ちゃん」

明日香ははっとして、

「ごめんなさい!頭が、真っ白になっちゃって…」

阿部はさらに、ニヤニヤし、

「真っ白じゃなくて…何か考えてただろ」

「え」

阿部は、ウインクをした。

「めちゃくちゃだったけど…。一瞬、すごくよかったよ」

「え!」

「昨日よりよかった。いいねえ〜青春かあ」

阿部は、明日香の肩を叩くと、再びステージに戻っていった。

明日香は、顔を真っ赤にした。

恵子は、笑いながら、明日香に、オレンジジュースをだした。

「恋するなんて…簡単。明日香ちゃんも簡単ね」

「簡単じゃないです!」

少しむきになる明日香に、

「あらあ。簡単ではないのね」

明日香はさらに、真っ赤になる。

恵子は、クスクスと笑うと、煙草に火を点けた。

真っ赤になったまま、ジュースのストローと格闘している明日香に、

恵子は、自然と微笑んだ。