やっと着いた。

結構、辺鄙な所にあるんだ…。

少女は駅を降り、目指す場所を確認した。

七時オープンだけど、少し早く着いてしまった。

ダブルケイ。

少女は、カバンからCDを取り出した。

LikeLoveYou…。

大ファンだった。

特に、歌声が大好きだった。

あたしが歌えるなら、こんな風に歌いたい。

こんな風に歌えたら、どんなに幸せなんだろうか。

少女は意を決して、

まだクローズとなっている扉を開けた。



カウンターの向こうに、憧れの人がいた。

少女は興奮して、叫んだ。

「は、速水、あ、明日香さんですね!あ、あたし…あなたの…」

明日香は、準備の手を止めた。

少女の腕の中にあるCDに気づき、微笑んだ。

「あなた…未成年ね。コーヒーしかないけど、いいかしら?」




優しさを伝える。

こうして、人は出会い、育っていく。

いろんな人に貰った優しさを、

次は、自分が与える番だから。


黄昏に香る音色。

完。