LikeLoveYouは同時に、ベストパフォーマンスも受賞した。

それは、啓介に対してだった。

彼は、バンドの資金づくりにこの1年、数多くのレコーディングに参加し、名声を得ていた。

「KEISUKE HAYAMI!」

のコールが響き渡った。

速水啓介。

深々と頭をさげる啓介。

彼の夢が叶ったのだ。







ステージ上に並ぶLikeLoveYou。

マイクの前に、明日香が立つ。

つたない英語。

つたない言葉で話す。

関係者にお礼を述べた後、

「この曲は…誰もが普通に経験し、本当は…とても特別で、感謝しなければならないことを歌っています。今ここに、あたし達が生きていられるのは、いろんな人の優しさ、思いやりがあったからです」

和美の写真をバックに、明日香は、心を込める。

「この世の中には、不幸なこと、分かり合えないことが、たくさんあります。あたしも、すべてを理解していません。だからこそ、あたしとは、育った国も環境も違う人達には…あたしが、いろんな人から貰った優しさだけを伝えたい」

明日香の心に、和美の…恵子の…そして、渡り廊下での少年…去っていた人達の優しい笑顔が浮かぶ。

「誰も、傷ついたり悲しくならないように。あたしが、貰った優しさ達を…皆さんに伝えたい」

明日香は…

ミュートをつけたトランペットに口づける。

YASASHISAを奏でる為に。