ついにこの日が来た。

グラミー賞のノミネート作品の発表だ。

LikeLoveYouは何と、

ジャズ部門と、ベストパフォーマー部門にノミネートされた。

YASASHISAも、最優秀曲としてノミネートされていたが、

これは、和美が作曲者となっていることが大きかった。

YASASHISAは、確実だといわれといた。

去年の不幸を、拭い去る為にも。

それは…実力でないと、いわれるかもしれないが、

明日香達は、気にしなかった。

ただ発表の、その日まで、

観客の前で、演奏するだけだった。

観客の反応こそが、すべてだった。

余程、危険でないかぎり、会場は選ばなかった。

確かに、差別はあったが、ライブを重ねるごとに、演奏を認める者も現れた。

あいつらは凄いと。

よければ認め、悪ければ認められない。

和美とのちがいは、ストリートに認められたかだ。

和美は、知識層や金持ちに好かれた。

LikeLoveYouは、あくまで地域に密着し、

仲間みたいになっていった。

和美も、ヨーロッパでは、そうしていた。

アメリカではそうする前に、有名になったから…できなかったのだろう。


明日香は、賞なんかどうでもよかった。

観客がいてくれることが、嬉しかった。


アメリカ中を飛び回り、ライブにライブを重ね、

明日香達は、レコード会社のバックアップよりも、観客の反響により、話題となり、ノミネートされたのだ。

そのことが、明日香は一番自信となった。