ライブで、一発録りされた音源は、大したミックスダウンもせず、

そのままの形で、リリースされた。

人々の感嘆、ため息…歓喜の叫び声。

すべてが、丸ごと入った…記録をこえた作品だった。

CDが、プレスされるまでの間、

LikeLoveYouは、徹底的にライブを行った。

最初は、悲劇の歌姫…河野和美の弟という興味によって、観客は集まってきた。

そして、ライブを見た観客は…

啓介のテクニックと、エモーショナルな音に驚き、

明日香の切ないトランペットよりも、

彼女の歌声の虜になった。

人々は、口々にこう言った。

彼女より、うまい歌手はたくさんいる。すごいテクニックを持った歌手も。

だけど…なぜか、もう一度聴きたい…聴きたくなるんだ。


ついに、アルバムはリリースされた。

シングルは、ラジオでかかりまくってことで、好調だった。

アルバムは、ライブであったから、最初は売れなかったが…

じわじわと、少しずつ地道なライブ活動によって、上がってきた。

リリースから半年…。

LikeLoveYouは、最大のチャンスを得る。

テレビ演奏だ。

それは、LikeLoveYouと、

ジャズ界の大御所…マリーナ・ヘインズとの共演だった。


マリーナ・ヘインズ。

無冠の女王といわれ、数多くの名盤を生み出しながらも、

決して、メジャーレーベルと契約を結ばなかった。

ミュージシャン・オブ・ミュージシャン。

シンガー・オブ・シンガー。

彼女は今年、

引退を表明していた。