和美が残したメロディーを、聴きながら、

明日香は、いつのまにか眠ってしまった。





ステージ上に、和美がいた。

見たことがない人が、トランペットを吹いている。

音で分かった。

あの人だ。

(健司さん)


明日香は一人、観客席にいた。


なんて、すごい音なんだろう。

いつのまにか、

ステージで歌っている人が変わった。

細身で、スラッとしたモデルのような女性。

(あれが理恵さん!?)

感動で、泣きそうになる明日香。

気付くと、隣に、

和美がいた。

和美は微笑むと、

明日香の肩を、軽く叩いた。

その瞬間、

明日香の周りを光が、包んだ。

眩しい照明の中、

一人ステージの上に立っている。

手に、トランペットを持って。

ステージの向こうに、三人がいた。

明日香は、ステージを降りようとする。

和美が、手で制した。

そして、

マイクとトランペットを指差し、

微笑んだ。

明日香は、緊張しながらも、トランペットに口づけた。

その姿を見、

嬉しそうに、三人は笑顔になり、

会場から消えていく。

消える前の、

一瞬、

和美が、振り返った。

明日香を、

ステージを見る。

切なく、やるせない表情…を浮かべてた。

でも、

すぐに笑顔になると、

真紅のドレスを翻し、

扉の向こう側に、

消えていった。