「でも…」

恵子は、阿部に微笑みかけた。

「大丈夫よ。さっき啓介から、電話があったの。一年後、今度は俺達がとるから…それまでは、元気でいろと」

恵子は、笑った。

「無理に、決まってるのにね。二年連続…日本人がとれるはずがないのに…。でも、待たなくちゃいけないわね。母親として」

「姉さん…」

阿部は、泣いていた。


たった一年。

それが、どんなに遠いことか、

阿部は知っていた。

「あたしのことは、大樹と啓介しか知らないから…誰にも言わないように。特に、明日香ちゃんには…。あの子の音は、優しさ。あたしのことで、曇らせたくないの」

恵子は、阿部に精一杯の笑顔を見せた。


笑顔。

そう笑顔。

できるだけ、

笑顔でいよう。

恵子は、そう誓った。