駅前で佇む。

いつもなら、もう出勤の時間だ。

六時半。

静かに牧村を待つ。

こんな時間に同伴でもなく、人を待つなんて…

普通の人みたい。

待つことが、嬉しいなんてなかった。

改札からではなく、

紗理奈が来た…反対方向の地下街から、

牧村はやってきた。

「職場が向こうなんだ。一駅もないから、歩いてきた」

紗理奈は、牧村の仕事を知らなかった。

「事務職さ。営業のね」

二人は、並んで歩きだす。

「ところで、どこいくの?」

牧村の質問に、

紗理奈は、笑顔でこたえた。

「カラオケ!」

「カラオケ!?いきなり!何か食べないの?」

「今のカラオケは、居酒屋より安くて…まあまあおいしいのよ」


「へえ〜」

感心する牧村。

「カラオケは、居酒屋並みに、メニューが豊富で、安い!」

「カラオケでごはんねえ…」

「そんなに、おかしいですか?それとも何?水商売の女がカラオケで、安くごはん食べたら、おかしいですか?」

「別におかしいとは…」

「そりゃあ。お客さんと同伴するときは、高いとこにいきます」

「うらやましいなあ」

「でも、仕事で食べてるから、気を使うし…おいしいとか、感じる余裕がない。だから、せめて、高いものを食べたいの」

「こわ!」

紗理奈は、そっぽを向くと、

「別にいいじゃないですか!こんなかわいい子と、いっしょに、ごはん食べれるんだから」